2008.04.21 Mon
ちょーとややこしい事を記録します。
苦手な方は閲覧回避☆
28歳、現状と今までの経験を踏まえた「普通のお菓子屋」について。
簡単に商売と言っても、今勢いだけで動く決心が付かないその訳とは。
脳内そのままぶちまけ記録。
■今、洋菓子店をするのは無謀■
と、言うより「普通の」洋菓子店という商売自体に今はとても否定的。
オーナーという立場で見れば、ハッキリ言ってリスクばかりの仕事です。
あなたならどうしますか?
①材料費の高騰
事の発端は、原油高に始まったこの情勢。
「洋」菓子ですから、国内材料では作れません。
多くは輸入製品です。
一般的に価格対材料原価は30%が平均的と言われているこの世界。
400円のケーキだと120円までって事になります。
こんなのは誰でも知ってます。
じゃあ…120円分の材料って具体的に何をどれだけ使えるかイメージできる?
俺もこの数ヶ月前までは所詮口だけでした…。
ケーキオンリーで120円。
例えば陶器を使えば大体1個50円。プラスチックカップでも1個15円。って事は残り70円~105円。
店名カードを刺せばマイナス5円…。
チョコレート20g、苺1粒、卵黄100g…などなど。
単純な配合でもどんどんと原価はかさみます。
更にそこに加わるリスクとしては、新規参入の小規模店に対する業者の対応。
ハッキリ言って酷いモンです。
安く材料を入手する事など不可能に近いです。
と、これはいわゆる「企業努力」の範囲。
これを回避する手段。
そう、値上げです。
400円のケーキを420円に…。
さてここで発生する問題は…。
値上げによる客離れ、消費率の低下です。
400円の時に100個売れていたケーキ。売上は40,000円。
420円にして売れ行きが10%(10個)低下。売上は37,800円。
意味無い…。
20円に敏感に反応するお客様の層が多ければアウトです。
メディアに出まくりのお店でもなければ大いにありえる話です。
どれくらいのクオリティーのお菓子を幾らで売りますか?
②生命線のバター枯渇
数年前に減らされた乳牛さん達。
処分後に起きた材料高で国内メーカーが一斉に国産にシフト。
国産バターの枯渇を招き、今では遂に末端の消費窓口であるスーパーからもバターが消えました。
いよいよ本当に無いのでしょうね…。
ここでも加わるリスク。
有名店や力のあるオーナーさんが経営するお店では、意外にバターは潤っています。何故か?そりゃ業者が優先してそっちへまわすから…。
新規参入の店には冷たいモンです。
代替品のマーガリンや植物性油脂を大いに薦めてきます。
風味無しのまずい油脂を…。
今から頑張って牛さんを育てても、この状況がマシになってくるまでには後2~3年は掛かるでしょう…。
まずい油脂でも頑張りますか?
高いバターでも頑張りますか?
とまぁ、ココまでは何とでもなる話…。
③そもそも従業員の無償労働で成り立つ商売。
全員8時間労働☆
一般の個人店ではまず不可能です。
要するに…現実的にそれだけ手間の掛かる仕事なのです。
1人で1日200個
2人で1日500個
3人で1日1000個
勿論、生産率は人数に比例しません。
でも、例えば年商4億円だった某洋菓子店F(フラン○ー○)
その時の自分の労働賃金は時給換算で405円です。
世の中の殆どのお店は労働基準法違反です。
「いや、修行中の身ですから」
Non…今や若者の認識の多くはそんな職人気質の理屈が通用しなくなっているのが現実です。
近頃では両親が出てきて裁判…なんて事もよく耳にします。
労働基準最低賃金731円/時
1日10時間(既にこれもアウトですけど…)×731円×25日
182,750円…そしてこれは「保険無し」です。
就職活動の時、「社会保険」にウエイトを置く学生がどれ程居た事でしょう…。今のご時勢とても大事な選択基準となっています。
182,750円
製造2人・販売2人を最低賃金で同条件で雇うと…
18,2750×4=731,000円
電気代・水道代・その他光熱費…
小規模店舗で約20万
テナント料(小規模店舗で約20万)
ココまで 113万1千円
まずはこれを補うために必要なケーキの個数。
113,1000÷400円=2,827個
材料費(2827個×400円×0.3)=339,240円
そしてお菓子は必ずロスが出ます。
33,9240円×1.15(15%)=390,126円
包材費(価格対原価約15%)
400×2827×0.15=169,620円
材料費+包材費合計=559,746円
要するに殆ど手元に残らない自転車操業で掛かる経費が…
月169万円程いる訳です…。
勿論、お菓子の構成は焼き菓子の詰め合わせやバースデーケーキ、
ロールケーキなどなど色々とあります。
しかし、一番最初に提示した製造2人・販売2人でどこまでできるかな…。
しかも各々10時間限定で。
朝7時出勤だったら、休憩無しでも17時まで…。
って事は経営者の懐に入るお金は「無償労働」によって生み出された17時以降の商品の売上…。
加えて、従業員から吸い取られた人件費という事になってくるのです。
だから「薄利」であるが故に「多売」を強いられるのです。
ケーキはそもそも、世の中の物価価値を基準にすれば1個700円でも高くは無いのです。
しかし700円では絶対に売れないです。
現実的にこの基本的な部分で大いなる矛盾が生じているのが現在の市場です。
もしもの話、経費を軸にケーキが中心の物価価値の世界なら…
ファミレス全品100円・自販のジュース全品15円なんて世界かも!?
現実的に本当に労働基準主体になってくると、消滅しても不思議ではない商売なのです。
綺麗事ではないこの現実…あなたは何を削りますか?
材料の質?従業員の生活?お客様の喜び?自分の生活?自分の給料?
必ずしも美味しい物が売れている訳では無く…
必ずしも年商の高い店が儲けている訳では無い…
これは机上の空論でもあり、逆に決して間違いでは現実。
だから今、まずは「幸せの定義」を模索中(笑)
普通の普通のとしつこく口にするのも、どう考えてもその普通が自分の幸せとリンクしないから…。
前例無き形を模索するのは面白いケド、難しい…。
派手じゃなくても、地味でも、家庭的でも、路地裏に潜む目立たない店でも、メディアにガンガン☆煌くビックなお店でも。
コンテストに燃える人、そんなものには無縁の人。
大企業に勤めるエリートさん、細々と日々仕事の町工場さん。
人生色々、幸せも色々☆
時間は掛かっても、
とにかく自分の良かれと思った形と選択・生き方に拘りたいなぁ…
なんて思います。
■Orenchi cafe ▷ Orenchi cafe のホームページ
苦手な方は閲覧回避☆
28歳、現状と今までの経験を踏まえた「普通のお菓子屋」について。
簡単に商売と言っても、今勢いだけで動く決心が付かないその訳とは。
脳内そのままぶちまけ記録。
■今、洋菓子店をするのは無謀■
と、言うより「普通の」洋菓子店という商売自体に今はとても否定的。
オーナーという立場で見れば、ハッキリ言ってリスクばかりの仕事です。
あなたならどうしますか?
①材料費の高騰
事の発端は、原油高に始まったこの情勢。
「洋」菓子ですから、国内材料では作れません。
多くは輸入製品です。
一般的に価格対材料原価は30%が平均的と言われているこの世界。
400円のケーキだと120円までって事になります。
こんなのは誰でも知ってます。
じゃあ…120円分の材料って具体的に何をどれだけ使えるかイメージできる?
俺もこの数ヶ月前までは所詮口だけでした…。
ケーキオンリーで120円。
例えば陶器を使えば大体1個50円。プラスチックカップでも1個15円。って事は残り70円~105円。
店名カードを刺せばマイナス5円…。
チョコレート20g、苺1粒、卵黄100g…などなど。
単純な配合でもどんどんと原価はかさみます。
更にそこに加わるリスクとしては、新規参入の小規模店に対する業者の対応。
ハッキリ言って酷いモンです。
安く材料を入手する事など不可能に近いです。
と、これはいわゆる「企業努力」の範囲。
これを回避する手段。
そう、値上げです。
400円のケーキを420円に…。
さてここで発生する問題は…。
値上げによる客離れ、消費率の低下です。
400円の時に100個売れていたケーキ。売上は40,000円。
420円にして売れ行きが10%(10個)低下。売上は37,800円。
意味無い…。
20円に敏感に反応するお客様の層が多ければアウトです。
メディアに出まくりのお店でもなければ大いにありえる話です。
どれくらいのクオリティーのお菓子を幾らで売りますか?
②生命線のバター枯渇
数年前に減らされた乳牛さん達。
処分後に起きた材料高で国内メーカーが一斉に国産にシフト。
国産バターの枯渇を招き、今では遂に末端の消費窓口であるスーパーからもバターが消えました。
いよいよ本当に無いのでしょうね…。
ここでも加わるリスク。
有名店や力のあるオーナーさんが経営するお店では、意外にバターは潤っています。何故か?そりゃ業者が優先してそっちへまわすから…。
新規参入の店には冷たいモンです。
代替品のマーガリンや植物性油脂を大いに薦めてきます。
風味無しのまずい油脂を…。
今から頑張って牛さんを育てても、この状況がマシになってくるまでには後2~3年は掛かるでしょう…。
まずい油脂でも頑張りますか?
高いバターでも頑張りますか?
とまぁ、ココまでは何とでもなる話…。
③そもそも従業員の無償労働で成り立つ商売。
全員8時間労働☆
一般の個人店ではまず不可能です。
要するに…現実的にそれだけ手間の掛かる仕事なのです。
1人で1日200個
2人で1日500個
3人で1日1000個
勿論、生産率は人数に比例しません。
でも、例えば年商4億円だった某洋菓子店F(フラン○ー○)
その時の自分の労働賃金は時給換算で405円です。
世の中の殆どのお店は労働基準法違反です。
「いや、修行中の身ですから」
Non…今や若者の認識の多くはそんな職人気質の理屈が通用しなくなっているのが現実です。
近頃では両親が出てきて裁判…なんて事もよく耳にします。
労働基準最低賃金731円/時
1日10時間(既にこれもアウトですけど…)×731円×25日
182,750円…そしてこれは「保険無し」です。
就職活動の時、「社会保険」にウエイトを置く学生がどれ程居た事でしょう…。今のご時勢とても大事な選択基準となっています。
182,750円
製造2人・販売2人を最低賃金で同条件で雇うと…
18,2750×4=731,000円
電気代・水道代・その他光熱費…
小規模店舗で約20万
テナント料(小規模店舗で約20万)
ココまで 113万1千円
まずはこれを補うために必要なケーキの個数。
113,1000÷400円=2,827個
材料費(2827個×400円×0.3)=339,240円
そしてお菓子は必ずロスが出ます。
33,9240円×1.15(15%)=390,126円
包材費(価格対原価約15%)
400×2827×0.15=169,620円
材料費+包材費合計=559,746円
要するに殆ど手元に残らない自転車操業で掛かる経費が…
月169万円程いる訳です…。
勿論、お菓子の構成は焼き菓子の詰め合わせやバースデーケーキ、
ロールケーキなどなど色々とあります。
しかし、一番最初に提示した製造2人・販売2人でどこまでできるかな…。
しかも各々10時間限定で。
朝7時出勤だったら、休憩無しでも17時まで…。
って事は経営者の懐に入るお金は「無償労働」によって生み出された17時以降の商品の売上…。
加えて、従業員から吸い取られた人件費という事になってくるのです。
だから「薄利」であるが故に「多売」を強いられるのです。
ケーキはそもそも、世の中の物価価値を基準にすれば1個700円でも高くは無いのです。
しかし700円では絶対に売れないです。
現実的にこの基本的な部分で大いなる矛盾が生じているのが現在の市場です。
もしもの話、経費を軸にケーキが中心の物価価値の世界なら…
ファミレス全品100円・自販のジュース全品15円なんて世界かも!?
現実的に本当に労働基準主体になってくると、消滅しても不思議ではない商売なのです。
綺麗事ではないこの現実…あなたは何を削りますか?
材料の質?従業員の生活?お客様の喜び?自分の生活?自分の給料?
必ずしも美味しい物が売れている訳では無く…
必ずしも年商の高い店が儲けている訳では無い…
これは机上の空論でもあり、逆に決して間違いでは現実。
だから今、まずは「幸せの定義」を模索中(笑)
普通の普通のとしつこく口にするのも、どう考えてもその普通が自分の幸せとリンクしないから…。
前例無き形を模索するのは面白いケド、難しい…。
派手じゃなくても、地味でも、家庭的でも、路地裏に潜む目立たない店でも、メディアにガンガン☆煌くビックなお店でも。
コンテストに燃える人、そんなものには無縁の人。
大企業に勤めるエリートさん、細々と日々仕事の町工場さん。
人生色々、幸せも色々☆
時間は掛かっても、
とにかく自分の良かれと思った形と選択・生き方に拘りたいなぁ…
なんて思います。
■Orenchi cafe ▷ Orenchi cafe のホームページ
PR
Post your Comment
無題
はあ~…
値上げすべきかどうか、現実と理想の狭間で揺れ動き、今まさに、波にのまれて沈没しそうなわが弱小ケーキ店の問題ですよねえ。
うちはもともと生ケーキ&バターケーキの原価率50%近いですから、インターネットでお取り寄せの高い高い四つ葉発酵バター(もうまもなく尽きますが)を使用しての現在販売中のケーキの原価率なんか、計算する気も起きません。朝7時から夜8時まで働いて、6時半頃帰ってくる旦那も動員して、9時頃やっと晩ご飯って生活維持している意味が見えない毎日です。ケーキを作っている、その事実が幸せってのは、ちょっと今は違う気がしてきています。まだ、“作れそうだけど作っていないケーキ”があるうちは、モチベーションも持続しそうですけど。
値上げすべきかどうか、現実と理想の狭間で揺れ動き、今まさに、波にのまれて沈没しそうなわが弱小ケーキ店の問題ですよねえ。
うちはもともと生ケーキ&バターケーキの原価率50%近いですから、インターネットでお取り寄せの高い高い四つ葉発酵バター(もうまもなく尽きますが)を使用しての現在販売中のケーキの原価率なんか、計算する気も起きません。朝7時から夜8時まで働いて、6時半頃帰ってくる旦那も動員して、9時頃やっと晩ご飯って生活維持している意味が見えない毎日です。ケーキを作っている、その事実が幸せってのは、ちょっと今は違う気がしてきています。まだ、“作れそうだけど作っていないケーキ”があるうちは、モチベーションも持続しそうですけど。
Re:無題
ikkokuriさんお疲れ様です☆
地域密着で頑張っておられるikkokuriさんのお店などは、正に値上げという判断に一番気を使われるかもしれませんね…。
「ボランティア」でない以上、お金の動きと現実的な生活とのバランスというのは、長く勤めていく為にはとても重要な部分ではないでしょうか…。
理想とは裏腹にどんどん変わっていく世間情勢。
高いモチベーションを保っておられたikkokuriさんが、苦悩している位ですから…満更自分の目算は的外れでは無いかもですね…。
理想(気持ち)と現実、どちらか一方ではなくて、上手に共存していける形を模索していこうかと思います☆
“作れそうだけど作っていないケーキ”が底を尽きた時には、
モチベーション回復の為に「あの手紙」を読んでみては如何ですか('▽'*)
地域密着で頑張っておられるikkokuriさんのお店などは、正に値上げという判断に一番気を使われるかもしれませんね…。
「ボランティア」でない以上、お金の動きと現実的な生活とのバランスというのは、長く勤めていく為にはとても重要な部分ではないでしょうか…。
理想とは裏腹にどんどん変わっていく世間情勢。
高いモチベーションを保っておられたikkokuriさんが、苦悩している位ですから…満更自分の目算は的外れでは無いかもですね…。
理想(気持ち)と現実、どちらか一方ではなくて、上手に共存していける形を模索していこうかと思います☆
“作れそうだけど作っていないケーキ”が底を尽きた時には、
モチベーション回復の為に「あの手紙」を読んでみては如何ですか('▽'*)
カレンダー
カテゴリー
最新コメント
最新記事
(03/23)
(03/16)
(03/12)
(03/11)
(01/29)
(01/25)
(01/21)
(01/10)
(01/01)
(12/31)
(12/11)
(11/22)
(11/18)
(11/07)
(11/06)
(10/22)
(10/18)
(10/16)
(09/27)
(09/26)
アーカイブ
プロフィール
HN:
Y.miyamura
年齢:
44
性別:
男性
誕生日:
1980/01/29
職業:
cafe オーナー
趣味:
何でも創作
自己紹介:
▽1997-1998
・大阪あべの辻製菓専門学校 通学
▽1998-2002
・花とお菓子の工房 フランシーズ 製造勤務
▽2002-2007
・神戸国際調理製菓専門学校 講師勤務
▽2007
・全国津々浦々の旅など…
自分探し&気分充電☆
▽2008
・コンディトライ神戸 神戸阪急店
商品開発・製造勤務
・菓子工房タンドル
非常勤製造勤務・情報処理開発担当
▽2009-
・orenchi system(仮)
PC保守作業・システム開発
って感じです☆
専門学校の講師も含めて洋菓子には長く携わっているので、お菓子に関する質問は何でもどーぞ(゚∇゚*)
■BBS ※質問はコチラ
・大阪あべの辻製菓専門学校 通学
▽1998-2002
・花とお菓子の工房 フランシーズ 製造勤務
▽2002-2007
・神戸国際調理製菓専門学校 講師勤務
▽2007
・全国津々浦々の旅など…
自分探し&気分充電☆
▽2008
・コンディトライ神戸 神戸阪急店
商品開発・製造勤務
・菓子工房タンドル
非常勤製造勤務・情報処理開発担当
▽2009-
・orenchi system(仮)
PC保守作業・システム開発
って感じです☆
専門学校の講師も含めて洋菓子には長く携わっているので、お菓子に関する質問は何でもどーぞ(゚∇゚*)
■BBS ※質問はコチラ
ブログ内検索
アクセス解析